1923年に皇太子裕仁親王(後の昭和天皇)が台湾を行されている。「東宮行啓」はその時の様子を記録した写真集である。
今回はこの写真集に見られる当時の台湾の様子について触れていきたい。
まずはこの写真集に掲載されている台湾の街並みを見てみよう。この当時の台湾は様々な文化が入り乱れた光景となっている。
台湾総督府や師範学校といった建物は日本の近代建築の様式となっており、大正時代を代表する様な佇まいをしている。街並みの写真もぱっと見日本と思えるような光景が広がっている。
かと思えば、皇太子を迎えるために作った奉迎門には多数の龍があしらわれており、大陸文化の影響が強く出ている。これらの建物が混在しているのが当時の台湾ならではの光景と言えるだろう。
そしてこれらの写真に写っている建物のいくつかは現存している。台湾総督府(現台湾総統府)や台南孔子廟などは現在も著名な観光地である。
写真を見たのちに現在の写真を見比べてみたり、現地を訪問してもてみても面白いだろう。
台湾を語るうえで忘れてはならないのは台湾原住民の存在である。この写真集には当時の台湾原住民の写真が多数掲載されている。
特にアミ族を始めとした各部族の人々500名が総督府前で謁見を受けた際の写真は圧巻であり、本当の意味での「台湾」の姿をしている人々の姿を見ることができる。
台湾原住民は我々にとって遠い存在ではない。アミ族出身で日本でも著名な方としては、野球選手では元中日ドラゴンズの郭源治や読売巨人軍の陽岱鋼等がある。
野球好きな方は彼らの文化に思いをはせてみてもよいだろう。
また、写真集には日本海軍の艦船の写真も多数掲載されている。
竣工間もない軽巡洋艦木曽の写真は、5500トン級巡洋艦が英国の巡洋艦を見習った露天艦橋を実装していることがよくわかる写真となっている。
この写真集には樺型駆逐艦「松」や「柏」の詳細な写真も掲載されている。
これらの駆逐艦は第一次世界大戦の時に十一駆逐隊 (榊、柏、松、杉) に所属し、マルタ島を中心とする地中海海域の船団護衛に当たった駆逐艦である。
実際に写真で見ると基準排水量約600トンの駆逐艦で欧州まで航海して任務にあたったことの凄さに驚かされる限りである。
陸軍関連の写真でも貴重な写真が多数掲載されている。鹵簿を囲み皇太子旗を奉じて進む騎兵の隊列は圧巻である。
面白い点としてはキャプションに「台湾歩兵第一連隊騎兵中隊」と書かれいてる点である。説明では歩兵連隊の配下に騎兵中隊があったとの事であり、騎兵連隊ではないところが面白い。
このために軍馬を輸送してきた時の様子の写真も掲載されている。
まだまだ書くべき内容は多数あるが、続きはぜひこの本をとって御覧になっていただきたい。
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ありがとうございます。
この台湾で出版された、160ページ超(!)の見応え充分な本「東宮行啓:1923年裕仁皇太子訪臺記念寫真帖」の魅力をさらに掘り下げるのが「私家版 台湾警察協会雑誌 皇太子殿下行啓記念号」です。
行啓直後の6月に全ページ日本語にて発行された原本を、国立台湾図書館が収蔵・デジタル公開しているデータから収録。十一社オリジナルの付録ページも追加していますので、さらに深く台湾行啓を捉える事ができますよ。
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